JOURNAL

#06 「美しい味」の原点となる人 / MAISON[PARIS]オーナー・シェフ 渥美 創太さん

第6回目は、EN TEAの成り立ちを語る上で重要な街・パリでつねに高い注目を集める一軒家のレストラン「MAISON」のオーナー・シェフ 渥美 創太さん。ブランドの設立前から現在までさまざまなご縁があるパリという街を繋がりとして、長く親交のある渥美シェフにお話を伺います。


Photo:11h45


EN TEA (以下、EN):「MAISON」には、世界中から今ここでしか味わえない体験を求めて、連日多くのゲストが訪れているとよく耳にします。そんな素晴らしい場で、EN TEAを扱っていただけていることがとても嬉しいです。

「MAISON」を訪れた人は、何よりその味わいに感動を受けつつ、過ごした時間に心から満たされると言います。渥美さんは「MAISON」というレストランをどのように考え、何を大切に店づくりされていますか?


渥美さん(以下、敬称略):店名の「MAISON」は、フランス語で「家」です。ゲストを家のように温かく迎え入れたいと思っています。空間は、ゲストの顔を見ながらサーブしたいというのがありオープンキッチンにしています。僕自身が直接お客さんと話すことはほぼなくて、僕は料理をして、サービスや厨房スタッフがやるべきことをそれぞれやる。それで店の雰囲気が良くなっていけばと思っています。

そして、お店というのはお客さんで賑わっているからこそだなと思っていて。スタッフの動きとお客さんの動きの相乗効果で、どんどん営業中盛り上がっていってほしいですね。

先日、うちのロングテーブル席でのことになるんですが、4、5人が本当に楽しそうにワイワイ話していたんです。それを見て、あれ? それぞれのお客さんの席を隔てるための物が置いてあるのに何故だろうと……、気になってスタッフに聞いてみたんですよ。そしたら全く関係ないお客さん同士が、食事を通して盛り上がりワインをシェアして話し込んでいるという。こんな風に店が図らずとも、来た人が仲良くなる感じがいいなと思います。


Photo:11h45


EN:大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私は「MAISON」から食の本当の楽しみを教わったと思っています。食は、五感がふるえる体験を多くの人に届けられるものなんだと感じました。渥美さんの料理は、どこか違う世界に連れて行ってくれる感じがするんですよね。そして、その世界への没入感もすごいからイマジネーションがどんどん広がっていく。


渥美:ありがとうございます。カウンターの席には、お一人様を優先的にご案内しているんですが、食後に「まるで劇場に来ているようだった」とお声かけいただくこともあります。


EN:「フレンチの本場であるパリで人気のレストラン」そう聞くと、シェフが饒舌に話をしていたり、演出や装飾に凝っていたり。そんなイメージをする人も多いと思いますが、「MAISON」はまるで違いますよね。

私もお店へ行った際、目の前の一糸乱れぬシェフたちの姿を見て、ひとつのゴールに向けて必死に走る選手のようだなと。ペースメーカーとなる渥美さんに、皆さん無駄な動きを全くせずついていっていて、ずっと戦っている。まるでスポーツの試合を観戦しに来たような……そんな臨場感とワクワク感を感じました。

こうしたスタイルは、昔から確立されていたんでしょうか?


Photo:Marie Monsieur



渥美:「Restaurant TOYO」にいた時は、三ッ星レストランとかに卸しているお魚屋さんから仕入れていたので、すごく目が養われました。ただ厳選された素材もいいけれど、たまに出会う「これ獲れすぎちゃったから」とおまけでついてくる小さい魚50匹みたいなものの方が楽しくて。オーナーの中山 豊光さんと二人で手に入ったばかりの素材を前に「これどうする?」と考える時間が面白かった。その偶然やワクワクにどう対処するかというのが、今のスタイルにも活かされていると思いますね。

「Vivant Table」でシェフとして働くことを決意したのも、同じようなワクワクがあったからです。それまで働いていた高級レストランとは全然路線が違って、素材との面白い出会いがたくさんありました。そこでは、土がついたままの色んなハーブがごちゃ混ぜでケースに入って届いたりして。きれいに整頓されたハーブから料理に使うものだけを取り出す、みたいな素材との付き合い方から一変しました。この素材は何? どう使う? など一から素材と向き合うことができて楽しかったです。「Vivant Table」にも来てくれましたよね。


EN:はい。そこでもライブ感のある料理を堪能しました。切り倒したばかりの木の節の感じを見て、これだったらお盆だねとか、こういう仕上がりがベストだねとか、そんな話をラフにしながらバシッとすごいものを完成させていく感じが印象的でした。それに同じメニューには二度と巡り会えないだろうという、そんな切なさも感じられる料理で美しかったですね。

その後に働かれていた「Clown Bar」のシェフとしての手腕もとても評価されていました。渥美さんはいつも良い意味で未完成なイメージというか、まだまだその先の可能性だったり未来を感じさせてくれたりする存在なのだと思います。EN TEAもそうした渥美さんの挑戦し続ける姿や、その時々での最善を尽くす姿勢にとても影響を受けています。

素材を大切にする渥美さんが、良いなと思うものやワインなどの基準をお聞きしたいです。そう言えば、先日、渥美さんからいただいたワインは驚くほどに美味しかったのですが、例えばあのワインなどは?


渥美:あれは「Case Corini」のバルラというワインで、「MAISON」のソムリエである竹林さんが、働きだした当初から扱いたいと提案してくれていたものです。イタリアからヨーロッパのキャリアをスタートさせた彼が本当に大切にしているワインなんですよ。先代からずっとブレずに作り手の思いをつないできていて、そこに関わる人たちにも全く濁りがない。だから本当に記憶に残る味なんだと思います。


EN:ワインに限らず言えることだと思いますが、良い飲み物って、作られた場所の景色がふわっと浮かんでくるタイプと、口にした瞬間のシーンがその一杯に閉じ込められるタイプとあると思うんですよ。バルラは、あの時の華やかなシーンと味わいがシンクロする感じがしました。その時がスペシャルになる飲み物だなって。


渥美:ワインのそういうところが、日本酒にもあったらいいですよね。最近、日本酒がよく話題に上がるので、その度にそのことを考えてしまいます。日本人だから、日本で飲む日本酒はすごく美味しい。だけど、パリで飲んでもその土地が浮かぶような酒にはまだ出会ってないかな。作り手のキャラクターや田んぼの風景までもが浮かぶ日本酒を探したいなと思っています。

それで言うとEN TEAの水出しは、どこで飲んでも水色の美しさとか清々しい香りが茶畑まで連れて行ってくれる感じはしますよね。


EN:渥美さん、今度日本に戻る際には、私たちの新たな活動拠点の一つでもある福岡の糸島にもお越しください。日本酒を一緒に飲みに行きましょう。私がいいなと思うのは、黄金の稲穂が風になびく姿が夕陽に重なるきれいな時。あのシーンがしっかりと映る日本酒かなと。ぜひその感動を味わっていただきたいなと思いました。


渥美:いいですね。作っている人が面白い、そんな日本酒も知りたいです。


EN:EN TEAのこれからにも良い学びがありそうです。ご一緒しましょう。

前半で一度お伝えしましたが、渥美さんのお店にEN TEAがあることをとても嬉しく思っています。あらためて、私たちのお茶をどのように感じていらっしゃいますか?


渥美:僕は、日本茶をそこまで飲み込んでいないんですよ。まだ研究が足りないので細かいことは言えませんが、EN TEAはヴァンナチュールにも似た「気持ちいい飲み物」だと思っています。どの種類の味がどうとかはなくて、体にすっと馴染むような飲み心地が好きですね。


EN:「MAISON」は素晴らしいヴァンナチュールが飲めるレストランとしても知られているので、本当に感慨深いです。


渥美:あとは水出し緑茶の持つキャッチーさは他にないところだと思います。急須で淹れる温かいお茶が主流の中ですごく印象に残る。30秒でできる驚きとその背景にある作り手たちの気持ちの大きさが両立していて、今後もっとお茶の可能性を広げてくれる気がしています。


「MAISON」にて、「LOBMEYR」のグラスで提供される茶。いつもより一層色鮮やかに見える。


EN:国を超えて伝わる「気持ちの良さ」があるかどうか。EN TEAのパートナーである方々には、表現は違えども皆んな同じ意識があるのだなと話を聞きながら思っていました。


渥美:これからも色んな取り組みが一緒にできたら良いですね。お茶をメニューに乗せる、日本の文化をただ紹介するということに留まらずにもっとユニークなことをしていきたいのでまたゆっくりパリで話せたらと思います。もちろん、日本に戻った時にはいつも通り食べたり飲んだりしながら未来について語り合いたいです。


EN:これからの色いろがすべて楽しみです。

パリの方々にもEN TEAをもっと知っていただけるように、さまざまな取り組みをしていきたいと思っているので、これからも良きアドバイスをお願いしたいです。より良いお茶を目指して、「MAISON」に訪れるゲストの皆さんにも気持ちいい一杯を楽しんでいただけたら嬉しいです。

そして話をしていてつくづく思ったのですが、お茶の魅力を伝える時に、渥美シェフや「MAISON」の目線はとても本質的だなと。今後は、お茶づくりや料理に使う形でご一緒いただくのはもちろん、「MAISON」さんからEN TEAの魅力を言語化していただくこともできたらいいなと思いました。

お茶の業界や私たちとは異なるお茶の魅力を伝えるメッセージが、とても贅沢ですが「MAISON」の言葉を通して生まれたらとても嬉しいです。


渥美:面白そうですね。すぐに、ぜひ実現しましょう。



PROFILE / 渥美 創太
19歳で渡仏し「Maison Troisgros」「STELLA MARIS」「Laboratoire de Joel ROBUCHON」などを経て、26歳で「Vivant Table」シェフに就任。28歳の時に、100年以上の歴史ある「Clown Bar」のシェフに抜擢される。2015年、パリで最もよく知られるレストランガイドで最優秀ビストロ賞を受賞。2019年、自身がオーナー・シェフを務める「MAISON」をオープン。
https://en.maison-sota.com/
https://www.instagram.com/maison_sota/




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