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#04 人の喜びに繋がるものづくり / クリエイティブディレクター竹山 香奈さん・イラストレーターeri2winさん

第4回目は、ブランドリニューアルのビジュアル面における立役者・クリエイティブディレクターの竹山 香奈さんと、植物画を担当したイラストレーターのeri2win(えりつぃん)さん。
私たちが理想とする“美しい茶”をカタチに、人の喜びに繋がるものづくりに向き合うデザインチームについてご紹介します。


新しいお茶袋の左側には、ロゴが白箔で施されている。中に入るティーバッグを含め、同一色相配色によるパッケージデザインが美しい。


EN TEA (以下、EN): 竹山さんとはブランド設立当初からのお付き合いで、いつも本当にありがとうございます。


竹山さん (以下敬称略):2017年の雑誌の取材がきっかけで、その後も渋谷にオープンした茶葉屋「GEN GEN AN幻」とのご縁が続いていきましたよね。


EN:「GEN GEN AN幻」はEN TEAの実験的なプロジェクトという位置付けでした。そこで竹山さんと交流するうちにお仕事としてもご一緒したいなと、それはシンプルな理由からでした。私たちがイメージしているブランドアイコンにとても近い方だなと思っていたんです。飲んでほしいと思う人の考えを、ブランドのあり方に活かしたいと思っていました。あれから紆余曲折ありましたが、ずっとブランドを支えていただいていて。eri2winさんも竹山さんがご紹介くださり、とても良いご縁でした。

今回に限らず、このコンテンツでは皆さんにこれまでどのようにお茶と付き合ってきたか、茶葉ブランドのEN TEAに対しどのような印象をお持ちなのかをおたずねしています。お二人にもお聞きしていいですか?


eri2winさん(以下、eri):私のおじいさんが急須でお茶を淹れる人だったので、いつも煎茶がある家で育ちました。今の暮らしの中でもお茶を自分で淹れる習慣があります。EN TEAは清々しくて清流のようなお茶ですよね。味わいも好きです。ギフト用パッケージも増えて常に新しさも感じています。


竹山:私は真逆で、ほとんど日本茶を飲まない家でしたね。いつもコーヒーがある家で育ちましたが、私はコーヒーが苦手なので、家では水か牛乳を飲んでいました。

そのため、お茶と言えばちょっと面倒な印象がありました。せっかく飲むなら本格的な煎茶を楽しみたいですし。ただ、EN TEAに関わるようになってからお茶の概念が変わりましたね。やっぱりティーバックで誰でも美味しくいただけるというのがすごいですよね。以前、スペシャリストの方から淹れていただいた煎茶が感動するほどに美味しかったんですが、それと遜色ないレベルのものが家で楽しめるというのが画期的だなと。


EN:それが願いのひとつにあるので、そう言っていただけると嬉しいです。


竹山:当初の依頼は、ブランドイメージを上質なものにシフトしたいというお話でしたよね。今よりやや無機質でシンプルだったデザインの路線を変えていきたいと思っていらっしゃったタイミングだったかなと思います。


EN:はい。それで、2018年に竹山さんをクリエイティブディレクターとしてお迎えして「茶と今日。CHA TOKYO」というブレンド茶のラインを立ち上げました。




以前展開していた商品「茶と今日。CHA TOKYO」


竹山:「茶と今日。CHA TOKYO」は、“東京土産”というギフトラインの側面もありましたよね。手に取りたくなるもの、ターゲットである女性にとって嬉しい素材を組み合わせたブレンド茶のイメージに合うものってどんなデザインだろうと考えた時に、初めてeri2winに植物画をお願いしたんですよね。ブレンド茶を展開するブランドはたくさんあるけれど、お茶に何がブレンドされているのか見てすぐわかるところはあまりないなと思っていて。柚子などすぐ想像できる素材もありますが、月桃の紅茶だとかはイメージしにくい。そして何より素材自体がアイキャッチになったら、華やかでいいのではと感じました。男性・女性とわけるのは私自身あまり好きではないのですが、女性的な感覚というか、手に取った時の心がふわっと踊る感じ、そういう気持ちを誘発するようなデザインができたらと思いました。


EN:EN TEAは東京で生まれたブランドで、当時“東京のお茶”と言われるものがなかったので作りたいと思っていました。そのことを同じ業界の人に話すと「東京には茶の木がないからでしょ」と。ただ、産地がここでなくてもその街らしさがつまっていれば、それは歴としたご当地茶だよねという。パリにも茶の木はないですが、世界的なパリの茶ブランドはありますから。


竹山:今は、「茶と今日。CHA TOKYO」で考えたことの延長線上に、先日行ったブランドリニューアルの方向性もあるのかなと感じています。


EN:そうですね。昨年9月のブランドリニューアルのビジュアル面では大変お世話になりました。今回は竹山さんの世界観の作り方からお聞きしていきたいです。


竹山:普段のブランディングやリ・ブランディングの仕事では、まずそのブランドが理想とするイメージを言語化していきます。EN TEAで言うところの「美しい」「エレガント」「洗練」などですね。そういったワードを書き出して整理していきます。ただ、今回のリニューアルにおいてこの工程は省きました。「茶と今日。CHA TOKYO」の時点でしっかりできていましたし、日頃から細かくブランドのイメージを擦り合わせられているので、悩むことなくデザインすることができました。“美しい茶”を素敵だなと思ってくれる人はどんな人格なのか、というのも具体的に設定しながら作っています。


EN:デザインでは無駄なものを入れないということをずっと大切にしてくださっていましたよね。


竹山:はい。それはブランド設立当初から(EN TEA代表)丸若さんが大切にしているものだと思うので。そこに少し華やかさをプラスすることが私の役割かなと思っています。ブランドリニューアルにおいては、キーワードとして「日常の中の贅沢品」というのがありました。品のいい"白"の印象を際立てたいので、今回はパッケージをクラフト紙から変更したり、ボトルのキャップを黒から白に変えたり。採用する素材はもちろん、写真を撮る時もなるべく白を意識しています。全体の色のトーンはなるべく揃えて、植物の色のみを印象的に使うようにしています。


クリップで添えられた絵葉書のようなカード。植物画の上には、茶の種別を表す数字が活版印刷により重ねられている。活版印刷の色の出方や裏面へ影響していない圧のかかり方などからデザインに対する強いこだわりが感じられる。


EN:このイラストが、“美しい茶”のイメージにとても合っているだけでなく、お茶が自然の恵みであることがよくわかるのが良いですよね。あらためてあの植物画はどう描かれているのでしょうか?


eri:私、幼い時から植物の絵を描いていて。見せ方については自然そのままよりも少しパッケージ向きの花をつけたり、バランスをちょっと調整したりしています。つぼみと花の時期にはまだ葉っぱは色づいていないだろうとか、そのあたりあべこべな組み合わせをあえて入れてアレンジしています。まずパッケージにあう植物画の合成イメージをパソコンで作成してから描きました。


竹山:画集や参考画像などをお渡しはしていましたが、実際に植物を採りに行ったりもしてくれていて。


eri:資料だけではありきたりな植物画になると思いました。植物を好きな人が描いたんだなと思っていただけたらうれしいです。


竹山:「茶と今日。CHA TOKYO」の時は葉っぱと実だけだったんです。今回は、種子や花を加えてより植物画として見せることを心がけています。また、デザインではゴミをなるべく出さない、捨てられないことも大事にしました。せっかく生分解性パッケージを採用しているので、ラベルをシールにしたり、シールにコーティングを施すことでプラゴミになってしまわないようにしたくて、クリップでカードを挟もうという発想になりました。このカードを集めてもらえたらいいなと。ひとつ買ったら他はどうなっているんだろうと考えるきっかけにもなればと思っています。


EN:良い話をありがとうございます。「消費されるものは潔く、そうではないものは残したくなるものを」が今回のパッケージリニューアルのテーマですね。ただのラベルだったら捨てられてしまうところでコレクション性を付加することにより延命するというのがすごく大切な気がしていて。作る側がどれだけ愛情を注いでいるかが伝わるといいですよね。茶農家さんや製茶に関わる人たちが人生をかけて取り組んでいるものを、しっかり最後までその温度感を保って表現したいと思っています。そういう意味ではパッケージも職人のこだわりが負けず劣らず、よく周りの方々からお褒めいただきますよ。





竹山:私は先日「クリップもオリジナルなんです」と周りに話したら、「そこまでやったの?」と驚かれました(笑)。


eri:あ……これ、オリジナルだったんだ!


竹山:これは、EN TEAチームの加藤さんの頑張りがあってこそ実現できたことです。


EN:竹山さんも親交のある「開化堂」当主の八木さんからも、新しいパッケージからは関わった人たちのこだわりと気持ちを込めて生まれたことが伝わってくると温かい言葉をいただいています。


竹山:そう言っていただけるととても嬉しいですし、光栄ですね。


EN:他にもデザインやパッケージに詳しい方から嬉しいコメントをいただいています。今回のパッケージは「華やかさと品が加わってとても素敵になりましたね」と。この大きな要素としてeri2winさんの絵の存在があります。

今だから言えることですが、実は竹山さんからご提案いただいた時に、今までのお仕事を拝見して今回のような仕事を受けてもらえるのだろうかと思いました。


竹山:普段eri2winが描いている壁画や、アートワークのことですね。

参考:eri2winさん Instagram
https://www.instagram.com/mmmuuugggeeennn/


EN:お仕事によってテイストが全く違うので驚きました。


eri:クライアントワークでは求められているものに寄り添ったテイストで表現しています。2022年よりアーティスト活動を始め、個展などで自分の絵を発表していますが、それは自分の世界を表現したポップアートです。その源には幼い時から描いていた植物画もあります。よく庭に出て草花をスケッチしていました。ですのでEN TEAのイラストを描けてとても嬉しいです。


EN:普段、どのような思いで作品を作られているのですか?


eri:絵を見た人全員がハッピーになるといいなと、どんな時も思って描いています。


竹山:eri2win自体がハッピーな人だからね!


eri:愛と笑いをテーマに生きています。クライアントワークはもちろん楽しんでばかりではいられないけれど、描く楽しみはいつも忘れないようにしています。作り手も受け手もハッピーであるように。そう願いながらすべての絵を描いています。


竹山:もともとハッピー繋がりですからね、eri2winとは。お互いに、みんながハッピーであれと心から思いながら生きている。


eri:みんないつも愛に包まれてますように。


竹山:その思いが本当に伝わってくる絵ですよね。


eri:EN TEAの植物もハッピーであってほしいです。


竹山:本当に。EN TEA(製造責任者)の野邊さんを中心に、たくさんの人が愛情を持って育んだお茶だから、それがしっかり伝わると良いですよね。前回の記事の生分解性ティーバッグ製造会社「山中産業」さんも相当なこだわりを持っていますし、みんなそれぞれの分野でいいものを作ろうと徹していますよね。


EN:はい。誰か一者の発表の場ではなくて、それぞれの思いを繋いでいくものづくりが目指すところにあります。

また、私たちのユニークな点として、北は北海道から南は鹿児島まで、日本のあらゆる所に縁がある人たちそれぞれの思いが繋がって生まれていることです。EN TEAの理想とする“美しい茶”の実現に向け集結したチームで、これからも丁寧に一つひとつ作り上げていけたら嬉しいです。


竹山:EN TEAのメンバーは日本だけではないですよね。EN TEAのルーツでもあるパリにはアートディレクターのEricもいます。EN TEAのロゴをはじめ、大枠はEric、細かなデザイン・印刷は日本のデザインチームでという体制ですから。


eri:EN TEAの(円相の)ロゴは日本人だとあえてフィーチャーしない感じがしますよね。だから新鮮だったんですね。


竹山:Ericがずっとアートディレクションをしてくれているから、独自の世界観になっているんだと思います。


EN:そうですね。竹山さんとはリニューアルデザインとしてはいったん落ち着きましたが、今後はこの世界観をもっと伝える場を作りたいよねと話しています。せっかく素敵な絵があるので、ノベルティなどにも力を入れられれば。


竹山:ブランドリニューアルのご案内時には、大判ポスターを一部の方々にお渡ししましたよね。


EN:「あれ欲しかった」という声もあるので、また何か企画できたらいいなと思っています。あと、竹山さんといつも一緒に制作を進めているチームの加藤がポスターをブックカバーにリメイクしていたのを見て、それいいなとか。


竹山: eri2winの絵は布に印刷してもかわいいですよね。


EN:風呂敷にもなりますしね。それ、いいですね。

そろそろ終盤ということで、EN TEAにもっとこうしたらいいなどご意見もいただけませんか?


竹山:eri2win、何か他にあったら嬉しいお茶とか描きたいものとかないですか。この植物を描きたいとお話したら、もしかしたら新しいお茶が生まれるかもしれない!


EN:そうですね。何か好きな植物があれば(笑)。


eri:私は新潟の生まれで、食べる菊が独特の香りと食感で好きです。菊はどうですか?


EN:菊は漢方でも用いられるものだから良いですね。中国の菊花茶が有名です。


eri:食べ物として菊が大好きなので、できたら嬉しいです。


竹山:スペシャルエディション的に期間限定で販売するのもいいですよね。


EN:最後に、竹山さんと以前“茶ガール”という連載コンテンツを展開していましたが、“茶ガール”のその後も考えたいです。

参考:食のメディア「RiCE.press」での連載コンテンツ“茶ガール”
https://www.rice.press/?tag=CHAGIRL


竹山:写真家の石田真澄さんと一緒に2018年〜2020年で50名の女性をスナップしましたね。月に3人撮影して記事を公開するという、今考えるとよく実現したな、と思える写真連載でした。当時、カフェラテやタピオカを飲みながら街を歩く若い女の子たちが象徴的で、その子たちの飲むものが日本茶に変わればいいよねってことから始まった企画。当時「GEN GEN AN幻」が渋谷にあったので、ストリート感のあるファッションコンテンツをやってみようというカジュアルな企画でしたが、今でも“茶ガール”はよく見られているそうです。女の子のキャスティング基準は「お茶が似合う子」とシンプルで、私と石田真澄さんの二人で「次は誰に出演してもらおうか」とわくわくしながら考えていました。“茶ガール”が制作会社のキャスティング資料に使われているという噂もあるくらい評判が良かったです。モデルになる子が飲みたいものを飲むのが一番楽しいよねということで、「GEN GEN AN幻」で実際にメニューから一杯選んでもらい撮影していましたが、季節に応じて選ぶものが変わっていったり、撮影の半面リサーチにもなっていました。

“茶ガール”に出演してくださった皆さんが今でもEN TEAのお茶を飲んでくれていたり、先日のブランドリニューアル後に「お店へ行きましたよ」とお知らせをくれたり、今でもお付き合いは続いています。当時、新型コロナ感染対策の関係で“茶ボーイ”をやる予定が流れてしまったけれど、また何かできたら良いですね。


EN:ぜひ次の展開では渋い大人も加えていただき、日本茶の似合うさまざまな人を取り上げてほしいです。お二人とも末長くハッピーなお付き合いよろしくお願いいたします。



PROFILE / 竹山 香奈

PARK365 Inc. 代表 企業・ブランドのコンセプト策定からビジュアルディレクション、CI・VIデザイン、コピーライティングを含めたブランディング全般を担う他、雑誌連載や写真展などの企画・編集も行う。毎日をちょっとでも楽しくするもの・ことを。美しい人とものが好き。
https://www.park365.jp/


PROFILE / eri2win

えりつぃん 大阪を拠点に活動するイラストレーター。壁画や店舗内装、大好きなヴァン・ナチュールのエチケット、ロゴやポスターなど幅広い案件に携わる他、アートワークの展示も行う。画風、デザインのイメージは無限大で、そのネイチャーなタッチは観る人をハッピーにさせる。屋号は夢幻 / ムゲン。
https://www.instagram.com/mmmuuugggeeennn/




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