JOURNAL
#03 環境のために私たちができること / 山中産業[ティーバッグ製造・販売]白石 俊正さん
第3回目は、EN TEAの環境に配慮した茶づくりにおいて欠かせないパートナー「山中産業」の海外向けPR担当である白石 俊正さん。私たちが、創業当時から大切にしている植物由来の生分解性ティーバッグの魅力について、この対談を通し詳しくご紹介します。
三角屋根の家のような外観デザインをした「山中産業」本社(京都市右京区・花園)。
EN TEA (以下、EN):私たちは、ブランド立ち上げ前からティーバッグには自然環境に配慮した素材を使いたいと考えていました。ただ日本にはあまり見当たらず……、色々と探し御社にたどり着きました。私たちも使っている生分解性ティーバッグの「ティーロード®ソイロン®」は、世界初のものなのですよね。そもそもどのような経緯で誕生したのですか?
白石さん (以下、敬称略):弊社は、現在飲用関係のフィルターがメインとなりますが、創業時の1950年頃はラッピングリボンや手芸糸など飲料とは全く関係のない繊維製品を扱っていました。私ども京都に本社を置く会社になりますので着物を召される方向けに帯芯も扱っていたのですが、1980年台に入って着物の需要が減少していき新商品を検討していたんです。長年繊維業に携わる会社としては何か新しいかたちでこの繊維製品を生かしたものをご提案できないかなと。“繊維を使ったイノベーションを起こそう!”というような、今風に言うとそういった流れが社内に起こったんです。それで、当時紙のティーバッグしか存在しない中で、ナイロン素材のメッシュフィルターができました。
1950年に西陣織のメーカーとして創業。以来、繊維加工メーカーとして名を馳せる。
EN:お茶は急須で飲むのが当たり前の時代ですよね。
白石:はい。京都はお茶の産地ですから、伝統的に日本茶の淹れ方は急須であるべきという固定概念は強くありましたね。とは言っても、当時すでに日本茶を飲まない方も増えてきており、ティーバッグの便利さが注目されつつありました。茶こしのようなメッシュフィルターであれば、おいしくいただけるだろうと。このナイロン素材のメッシュフィルターも、世界ではじめての製品です。また当時は、一般的に四角型のティーバッグが主流でしたので、より茶葉を中で膨らますことができる三角型のティーバッグにするなど試行錯誤を重ねました。おかげさまでさまざまな飲料メーカーさんで展開することができ、20年ほどはナイロン素材のティーバッグを主に販売しました。
ただ一方で、弊社の作るティーバッグというのはやはり使い捨てのものになるので環境配慮に欠けているのではないかという問題意識がずっとありまして。人と地球に優しいものづくりを目指す会社としては、いち早く環境保全に取り組むべきだと考えていたんですね。主力であるナイロン素材のティーバッグに代わるものについて、企画当初はリサイクルポリエステルに着目していました。ただ再生繊維を使ったとしても、リサイクルするシステムが確立していない状況で、その機運も感じられない時でしたからね。素材自体を環境に優しい生分解性のものにしようと、取り組みを始めました。実は「ティーロード®ソイロン®」が、今年でちょうど発売から20年を迎えます。
EN:おめでとうございます。これまでを振り返るお話をもっと伺いたいです。
白石:はじめの2、3年は年間で数十万円しか売上げがないという状況でした。生産中止を考えたこともありましたね。そんな中、自社製品の可能性を信じて、一度海外にも目を向けてみようという話になりました。ティーバッグはもちろん海外でも使われていましたし、何か新しい発見があるのではないかと展示会に出しました。それが18年ほど前、マレーシアであった日本茶やコーヒー関係の展示会でした。そこで「こんなに環境に優しいものがあるのか」という嬉しい反響をいただきました。我々の方も、「こんなに海外の人は環境に興味があるのか」と気づくことができましたね。
EN:それで海外向け商品として、本格的に舵を取ったのですね。今、国内の反応はいかがですか?
白石:現在でも売上比率で言いますと、海外が約7割、国内が約3割です。どこの企業も、従来のティーバッグを切り替えることはコストの問題もあって難しいみたいですね。EN TEAさんのように、立ち上げ当時から必ずこの素材を使おうといった意識でおられるお客様については長く良い関係を築けています。
今は、少しずつですが海外に向けてお茶を輸出される際に選んでいただくことが増えてきました。環境保全についてはヨーロッパに習えという流れが日本にもきていますよね。国内では、コロナ禍を経てSDGsに関する意識も高まりつつあるのでこれからに期待をしています。
EN:私たちも、アフターコロナにおける接客や販売のあり方を色々と模索しているところです。昨年新たに「伊勢丹新宿店」に店舗を構え、あらためて商品の大切にしている点をしっかり伝えていきたいなと思いました。中でも、生分解性ティーバッグであることは大事なポイントだと感じています。時々、お客様から「生分解性と言っても、結局は燃えるゴミになるんでしょう。だったらもう少し安い方が」と言われることもあります。確かにおっしゃる通り。ですがだからこそそこにしっかりと向き合っていきたい。私たちは、まずできることから始めることが重要だと思っています。そういう意味で、自分たちも「ティーロード®ソイロン®」の説明を丁寧にしていきたいと思っています。
白石:そういう風に言っていただけてとても嬉しいです。ただ、今おっしゃったように「日本ではティーバッグを燃やすことに何も規制がないから、そこまで気を使う必要はないんじゃない?」という声は多いですよね。それに対し、我々は「コンポスト(堆肥化)が可能です」とご返答しておりますが、今度は「どこでコンポストしてくれるの?なかなかないでしょう」と言われてしまいます。だから消費者も企業も、今はまだこの素材ではなくていいよねという……。
EN:コンポストの仕組みができあがるには、まだまだ時間がかかりますよね。ただ何か動かないと。
白石:そうですね。だから我々としても、少しでも環境に優しい素材を使用した製品を世に多く送り出し社会に貢献していければと思っています。今、包装やパッケージにできるだけ紙を混ぜて資材の石油含有量を下げようという動きも出ていますし、それと一緒ですよね。
我々は、100%生分解性のティーバッグで堆肥化できる製品を扱っているのが一番の強みだと思っていますが、コンポスト施設まで含めてご提案できていないことをずっと課題に感じています。これまでの20年は環境にやさしいソイロン素材のティーバッグを販売することに注力してきました。これからの10年、いや20年かもしれませんが、次は今あるティーバッグを堆肥化するところまで一緒におすすめできるよう努めたいと思っています。
ティーバッグについては、やはりどこかに回収してほしいという消費者心理がありますよね。だから例えば御社のような実店舗のあるお客様にもご協力いただき、店舗に使用後のティーバッグの回収を行ってもらったり、それらからできた有機肥料のお茶だとわかるように展示してもらいながら販売できたりするといいですよね。環境と安全に配慮したものづくりのさらなるステップとしては、そこまで持っていけたらと思っています。
EN:自分たちの損得ではなくて、人や社会全体にとって良いかたちを追求したいという思いでずっとされてきたんだというのがよくわかりました。私たちもその心意気を見習っていきたいと思います。焦らずに一つひとつ、自分たちができることを積み重ねていけたらと思います。
そういえば、2017年にパリで行われたインテリア見本市の『メゾン・エ・オブジェ』のメインステージでEN TEAを紹介する機会がありました。その時に「マリアージュフレール」のテイスターの方々が噂を聞きつけて訪れてくれたんですね。その時すごくおいしいねと褒めていただいたのですが、ひとつご指摘も受けたんです。「このティーバッグが残念」と。その一言はかなり衝撃的でした。ただよくよく話してみると、彼らはウチのティーバッグをナイロンだと勘違いしていたんです。細かく説明をすると、最後には「いい意味でクレイジーだ」と言われました(笑)。日本人らしい隠れた美学のように感じて、エレガントだとも。話は戻りますが、ティーバッグを使った後に燃やすから意味がないと言われてもそこで留まらず「今はこう考えています」と続けていくことが大切だと思います。
私たちのコンポストの話になるのですが、今年から家庭用コンポストを買ってそれぞれでも試したりしているんですよ。ティーバッグが堆肥化していくのを見るのって楽しいよねとか話したりしています。繊維が細くなっていき、どんどんなくなってく感じですね。
白石:そうですね。
EN:今さらですが、家庭用コンポストでも問題ないですか?
白石:家庭用コンポストでも大丈夫です。我々も開発時の20年前に家庭用コンポストを試しましたよ。当時のものはバスタブくらいのサイズでしたが(笑)。今のものと異なり、細菌を加えるなどひと手間あったり、分解する時の匂いがきつかったり。その時のものでも大体1ヶ月で堆肥化していたので、今のものだったら全く問題ないですね。
EN:大袈裟に捉えずに、できる人から無理せず家庭用コンポストから始めてくれるといいですよね。店舗だけでなくネットでも気軽に買えるものですし、やってみると特別なことはなくて、すぐに習慣として取り入れられることがわかりますね。。ゴミを入れかき混ぜる、を繰り返すだけですからね。これからは、まず自分たちのコンポスト体験をお客様に届けていくというのが大切だなと思っています。
他にも「ティーロード®ソイロン®」に関する何か接客で使えるような資料があれば、教えていただきたいです。
*資料 「山中産業」提供による、コンポスト生分解性試験の資料。長くとも30日後には土に還るという。
白石:少し前のものになりますが、堆肥化する様子がわかる上記の資料をはじめ、海外の販売基準として必要なコンポスト認証の書類があります。生分解材料認証で、アメリカは「BPI.」、ヨーロッパは「TUV」という機関で取得しています。
EN:ありがとうございます。データをいただき接客に生かしていきたいと思います。ちなみに、日本では何か認証を取得していますか?
白石:日本では、「JBPA (Japan Bioplastics Association)」という機関で認証を取得しており、そこが定める生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの両方の基準を満たしています。
実は、コンポスト認証と言っても色々あるんですよね。我々はインダストリアルコンポストという工業的堆肥化施設での生分解性が可能な認証を取得しています。具体的な条件としては、温度58度・湿度85%以上であれば1ヶ月以内に分解(*資料)できるということになります。
EN:なるほど、勉強になります。
教えていただくことばかりで恐縮なのですが、この機会にEN TEAはもっとこうしたらいいなどご意見もお聞きしたいです。
白石:アドバイスではないのですが……、EN TEAさんは他社との新しい取り組みを色々とされているイメージがありますので弊社とも一緒に新商品を考えてもらえたら嬉しいです。「ティーロード®ソイロン®」に代わるすごいものを、何だか叶えてもらえそうな期待感があるブランドさんなんですよね。そして、可能かどうかわからないことにはなりますが、弊社と御社の店舗でタッグを組んで新しいサービスを始めるなどしてみたいですね。店頭に使用後のティーバッグを持参すると、もれなく季節のお茶が一杯サービスされるみたいな。そういったお客様が喜ぶようなこともやってみたいです。
EN:いいお話ですね。店舗の環境を考えなければなりませんが、飲んだ後のお茶を乾かしてもらったものを持ってきていただいて、回収BOXに集めるとかは一度トライアルできたら良いですよね。
東京ですべてを完結することは難しいかもしれませんですが、未来に繋がる魅力的なことなので丁寧に考えてみたいです。
白石:ありがとうございます。実は、先日まで欧州に出張だったんですが、ヨーロッパのさまざまな国の紅茶を扱う製茶工場で環境に関する話をしていたんですね。ドイツでもお茶屋さんが堆肥化するところまではご提案できていないようでしたし、他の国でも聞いたことがないと。スモールスタートとはいえ、もしこの取り組みを始められたら世界ではじめてかもしれませんね。
EN:最初から大掛かりにせずとも、取り組みの意義を感じてくれた方々と一緒に考えていくイメージでスタートできたら。一人でも理解してくれる人と実現していく取り組みとして来年何かしらできたら嬉しいです。
白石:そうですね。こちらでも色々と練らせていただき、お話を続けていければ面白いかなと。我々も国内の意識がもっと高まるように、年2回出展している展示会『サステナブル マテリアル展(東京・大阪2会場)』などで活動を随時発信していきたいと思います。
EN:私たちの店舗でも、ディスプレーなどに工夫をしていきたいと思っています。自分たちのコンポストである程度分解した現物を工夫して設置できたらと考えています。言葉で伝えられることには限界がありますが、視覚も合わせて興味を持ってもらえる表現をしていきたいです。
白石:いいですね。
「伊勢丹新宿店」にある、現在のEN TEAの店舗一角。ティーバッグもディスプレー演出として使っている。
EN:私たちは、今ティーバッグそのものが茶道具だと思ってご提案しています。急須と同じように、お茶を美味しく飲むための道具であると。だからこそ、ティーバッグの素材にこだわっていきたいと思っています。御社の「ティーロード®ソイロン®」のテトラバッグはティーバッグ内の体積が大きく、茶葉の上下運動を促しやすい形状でお茶の風味をより良く引き出してくれます。そういった美味しく飲むための技術革新がそこにはしっかりと感じられる。包装に留まらない、お茶を美味しく淹れるという役割ができているなとよく思っています。
白石:ティーバッグも茶道具のひとつ……。身近な方からそういった価値観を覆すことが聞けて非常に嬉しいです。我々、ティーバッグ製造会社というのはこれまで長く「安もんや」と、言われてきました。今でこそティーバッグの用途を見直す機運が高まっていますが、EN TEAさんのように最高級の茶葉でティーバッグ商品をご提案されるお茶屋さんが増えていくといいですよね。
知人にお抹茶の表千家の先生がいて、以前EN TEAさんのお茶をその方へ贈ったんですよ。そうしたらめちゃくちゃ喜んでくださって。お煎茶の方ではないんですが、ティーバッグについて感想を聞いたら「これはこれで美味しい飲み方やし、ちゃんと淹れたらいいんやで」と言われました。さらに手軽で便利だということも言っていただいて、今のお話にも通じるなとふと思い出しました。
EN:今回のお話が、たくさんの方に届けば皆さんきっとティーバッグへの印象が変わるだろうと思いました。貴重なお時間をありがとうございました。
PROFILE / 白石 俊正
京都にあるティーバッグ・ドリップバッグなど飲用関係のフィルターとラッピング資材の企画・製作を行う「山中産業」営業部・部長。主に、海外に向けた商品のPRや販売活動に従事。商品を売るだけではなく、幅広い顧客のニーズを抽出し、社内の製品開発者へとつなぐ役割を担っている。
https://yamanaka-sangyo.jp/
水出し緑茶 ティーバッグ7個入
¥ 1,728(税込)
心が晴れる鮮やかな緑と透き通るような美しさ。さまざまな場面で気分を明るくし、整えてくれるEN TEAを象徴する茶です。500mlの水に、ティーバッグを入れて30秒間シャカシャカ振れば、瑞々しい茶がお楽しみいただけます。
三角屋根の家のような外観デザインをした「山中産業」本社(京都市右京区・花園)。
EN TEA (以下、EN):私たちは、ブランド立ち上げ前からティーバッグには自然環境に配慮した素材を使いたいと考えていました。ただ日本にはあまり見当たらず……、色々と探し御社にたどり着きました。私たちも使っている生分解性ティーバッグの「ティーロード®ソイロン®」は、世界初のものなのですよね。そもそもどのような経緯で誕生したのですか?
白石さん (以下、敬称略):弊社は、現在飲用関係のフィルターがメインとなりますが、創業時の1950年頃はラッピングリボンや手芸糸など飲料とは全く関係のない繊維製品を扱っていました。私ども京都に本社を置く会社になりますので着物を召される方向けに帯芯も扱っていたのですが、1980年台に入って着物の需要が減少していき新商品を検討していたんです。長年繊維業に携わる会社としては何か新しいかたちでこの繊維製品を生かしたものをご提案できないかなと。“繊維を使ったイノベーションを起こそう!”というような、今風に言うとそういった流れが社内に起こったんです。それで、当時紙のティーバッグしか存在しない中で、ナイロン素材のメッシュフィルターができました。
1950年に西陣織のメーカーとして創業。以来、繊維加工メーカーとして名を馳せる。
EN:お茶は急須で飲むのが当たり前の時代ですよね。
白石:はい。京都はお茶の産地ですから、伝統的に日本茶の淹れ方は急須であるべきという固定概念は強くありましたね。とは言っても、当時すでに日本茶を飲まない方も増えてきており、ティーバッグの便利さが注目されつつありました。茶こしのようなメッシュフィルターであれば、おいしくいただけるだろうと。このナイロン素材のメッシュフィルターも、世界ではじめての製品です。また当時は、一般的に四角型のティーバッグが主流でしたので、より茶葉を中で膨らますことができる三角型のティーバッグにするなど試行錯誤を重ねました。おかげさまでさまざまな飲料メーカーさんで展開することができ、20年ほどはナイロン素材のティーバッグを主に販売しました。
ただ一方で、弊社の作るティーバッグというのはやはり使い捨てのものになるので環境配慮に欠けているのではないかという問題意識がずっとありまして。人と地球に優しいものづくりを目指す会社としては、いち早く環境保全に取り組むべきだと考えていたんですね。主力であるナイロン素材のティーバッグに代わるものについて、企画当初はリサイクルポリエステルに着目していました。ただ再生繊維を使ったとしても、リサイクルするシステムが確立していない状況で、その機運も感じられない時でしたからね。素材自体を環境に優しい生分解性のものにしようと、取り組みを始めました。実は「ティーロード®ソイロン®」が、今年でちょうど発売から20年を迎えます。
EN:おめでとうございます。これまでを振り返るお話をもっと伺いたいです。
白石:はじめの2、3年は年間で数十万円しか売上げがないという状況でした。生産中止を考えたこともありましたね。そんな中、自社製品の可能性を信じて、一度海外にも目を向けてみようという話になりました。ティーバッグはもちろん海外でも使われていましたし、何か新しい発見があるのではないかと展示会に出しました。それが18年ほど前、マレーシアであった日本茶やコーヒー関係の展示会でした。そこで「こんなに環境に優しいものがあるのか」という嬉しい反響をいただきました。我々の方も、「こんなに海外の人は環境に興味があるのか」と気づくことができましたね。
EN:それで海外向け商品として、本格的に舵を取ったのですね。今、国内の反応はいかがですか?
白石:現在でも売上比率で言いますと、海外が約7割、国内が約3割です。どこの企業も、従来のティーバッグを切り替えることはコストの問題もあって難しいみたいですね。EN TEAさんのように、立ち上げ当時から必ずこの素材を使おうといった意識でおられるお客様については長く良い関係を築けています。
今は、少しずつですが海外に向けてお茶を輸出される際に選んでいただくことが増えてきました。環境保全についてはヨーロッパに習えという流れが日本にもきていますよね。国内では、コロナ禍を経てSDGsに関する意識も高まりつつあるのでこれからに期待をしています。
EN:私たちも、アフターコロナにおける接客や販売のあり方を色々と模索しているところです。昨年新たに「伊勢丹新宿店」に店舗を構え、あらためて商品の大切にしている点をしっかり伝えていきたいなと思いました。中でも、生分解性ティーバッグであることは大事なポイントだと感じています。時々、お客様から「生分解性と言っても、結局は燃えるゴミになるんでしょう。だったらもう少し安い方が」と言われることもあります。確かにおっしゃる通り。ですがだからこそそこにしっかりと向き合っていきたい。私たちは、まずできることから始めることが重要だと思っています。そういう意味で、自分たちも「ティーロード®ソイロン®」の説明を丁寧にしていきたいと思っています。
白石:そういう風に言っていただけてとても嬉しいです。ただ、今おっしゃったように「日本ではティーバッグを燃やすことに何も規制がないから、そこまで気を使う必要はないんじゃない?」という声は多いですよね。それに対し、我々は「コンポスト(堆肥化)が可能です」とご返答しておりますが、今度は「どこでコンポストしてくれるの?なかなかないでしょう」と言われてしまいます。だから消費者も企業も、今はまだこの素材ではなくていいよねという……。
EN:コンポストの仕組みができあがるには、まだまだ時間がかかりますよね。ただ何か動かないと。
白石:そうですね。だから我々としても、少しでも環境に優しい素材を使用した製品を世に多く送り出し社会に貢献していければと思っています。今、包装やパッケージにできるだけ紙を混ぜて資材の石油含有量を下げようという動きも出ていますし、それと一緒ですよね。
我々は、100%生分解性のティーバッグで堆肥化できる製品を扱っているのが一番の強みだと思っていますが、コンポスト施設まで含めてご提案できていないことをずっと課題に感じています。これまでの20年は環境にやさしいソイロン素材のティーバッグを販売することに注力してきました。これからの10年、いや20年かもしれませんが、次は今あるティーバッグを堆肥化するところまで一緒におすすめできるよう努めたいと思っています。
ティーバッグについては、やはりどこかに回収してほしいという消費者心理がありますよね。だから例えば御社のような実店舗のあるお客様にもご協力いただき、店舗に使用後のティーバッグの回収を行ってもらったり、それらからできた有機肥料のお茶だとわかるように展示してもらいながら販売できたりするといいですよね。環境と安全に配慮したものづくりのさらなるステップとしては、そこまで持っていけたらと思っています。
EN:自分たちの損得ではなくて、人や社会全体にとって良いかたちを追求したいという思いでずっとされてきたんだというのがよくわかりました。私たちもその心意気を見習っていきたいと思います。焦らずに一つひとつ、自分たちができることを積み重ねていけたらと思います。
そういえば、2017年にパリで行われたインテリア見本市の『メゾン・エ・オブジェ』のメインステージでEN TEAを紹介する機会がありました。その時に「マリアージュフレール」のテイスターの方々が噂を聞きつけて訪れてくれたんですね。その時すごくおいしいねと褒めていただいたのですが、ひとつご指摘も受けたんです。「このティーバッグが残念」と。その一言はかなり衝撃的でした。ただよくよく話してみると、彼らはウチのティーバッグをナイロンだと勘違いしていたんです。細かく説明をすると、最後には「いい意味でクレイジーだ」と言われました(笑)。日本人らしい隠れた美学のように感じて、エレガントだとも。話は戻りますが、ティーバッグを使った後に燃やすから意味がないと言われてもそこで留まらず「今はこう考えています」と続けていくことが大切だと思います。
私たちのコンポストの話になるのですが、今年から家庭用コンポストを買ってそれぞれでも試したりしているんですよ。ティーバッグが堆肥化していくのを見るのって楽しいよねとか話したりしています。繊維が細くなっていき、どんどんなくなってく感じですね。
白石:そうですね。
EN:今さらですが、家庭用コンポストでも問題ないですか?
白石:家庭用コンポストでも大丈夫です。我々も開発時の20年前に家庭用コンポストを試しましたよ。当時のものはバスタブくらいのサイズでしたが(笑)。今のものと異なり、細菌を加えるなどひと手間あったり、分解する時の匂いがきつかったり。その時のものでも大体1ヶ月で堆肥化していたので、今のものだったら全く問題ないですね。
EN:大袈裟に捉えずに、できる人から無理せず家庭用コンポストから始めてくれるといいですよね。店舗だけでなくネットでも気軽に買えるものですし、やってみると特別なことはなくて、すぐに習慣として取り入れられることがわかりますね。。ゴミを入れかき混ぜる、を繰り返すだけですからね。これからは、まず自分たちのコンポスト体験をお客様に届けていくというのが大切だなと思っています。
他にも「ティーロード®ソイロン®」に関する何か接客で使えるような資料があれば、教えていただきたいです。
*資料 「山中産業」提供による、コンポスト生分解性試験の資料。長くとも30日後には土に還るという。
白石:少し前のものになりますが、堆肥化する様子がわかる上記の資料をはじめ、海外の販売基準として必要なコンポスト認証の書類があります。生分解材料認証で、アメリカは「BPI.」、ヨーロッパは「TUV」という機関で取得しています。
EN:ありがとうございます。データをいただき接客に生かしていきたいと思います。ちなみに、日本では何か認証を取得していますか?
白石:日本では、「JBPA (Japan Bioplastics Association)」という機関で認証を取得しており、そこが定める生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの両方の基準を満たしています。
実は、コンポスト認証と言っても色々あるんですよね。我々はインダストリアルコンポストという工業的堆肥化施設での生分解性が可能な認証を取得しています。具体的な条件としては、温度58度・湿度85%以上であれば1ヶ月以内に分解(*資料)できるということになります。
EN:なるほど、勉強になります。
教えていただくことばかりで恐縮なのですが、この機会にEN TEAはもっとこうしたらいいなどご意見もお聞きしたいです。
白石:アドバイスではないのですが……、EN TEAさんは他社との新しい取り組みを色々とされているイメージがありますので弊社とも一緒に新商品を考えてもらえたら嬉しいです。「ティーロード®ソイロン®」に代わるすごいものを、何だか叶えてもらえそうな期待感があるブランドさんなんですよね。そして、可能かどうかわからないことにはなりますが、弊社と御社の店舗でタッグを組んで新しいサービスを始めるなどしてみたいですね。店頭に使用後のティーバッグを持参すると、もれなく季節のお茶が一杯サービスされるみたいな。そういったお客様が喜ぶようなこともやってみたいです。
EN:いいお話ですね。店舗の環境を考えなければなりませんが、飲んだ後のお茶を乾かしてもらったものを持ってきていただいて、回収BOXに集めるとかは一度トライアルできたら良いですよね。
東京ですべてを完結することは難しいかもしれませんですが、未来に繋がる魅力的なことなので丁寧に考えてみたいです。
白石:ありがとうございます。実は、先日まで欧州に出張だったんですが、ヨーロッパのさまざまな国の紅茶を扱う製茶工場で環境に関する話をしていたんですね。ドイツでもお茶屋さんが堆肥化するところまではご提案できていないようでしたし、他の国でも聞いたことがないと。スモールスタートとはいえ、もしこの取り組みを始められたら世界ではじめてかもしれませんね。
EN:最初から大掛かりにせずとも、取り組みの意義を感じてくれた方々と一緒に考えていくイメージでスタートできたら。一人でも理解してくれる人と実現していく取り組みとして来年何かしらできたら嬉しいです。
白石:そうですね。こちらでも色々と練らせていただき、お話を続けていければ面白いかなと。我々も国内の意識がもっと高まるように、年2回出展している展示会『サステナブル マテリアル展(東京・大阪2会場)』などで活動を随時発信していきたいと思います。
EN:私たちの店舗でも、ディスプレーなどに工夫をしていきたいと思っています。自分たちのコンポストである程度分解した現物を工夫して設置できたらと考えています。言葉で伝えられることには限界がありますが、視覚も合わせて興味を持ってもらえる表現をしていきたいです。
白石:いいですね。
「伊勢丹新宿店」にある、現在のEN TEAの店舗一角。ティーバッグもディスプレー演出として使っている。
EN:私たちは、今ティーバッグそのものが茶道具だと思ってご提案しています。急須と同じように、お茶を美味しく飲むための道具であると。だからこそ、ティーバッグの素材にこだわっていきたいと思っています。御社の「ティーロード®ソイロン®」のテトラバッグはティーバッグ内の体積が大きく、茶葉の上下運動を促しやすい形状でお茶の風味をより良く引き出してくれます。そういった美味しく飲むための技術革新がそこにはしっかりと感じられる。包装に留まらない、お茶を美味しく淹れるという役割ができているなとよく思っています。
白石:ティーバッグも茶道具のひとつ……。身近な方からそういった価値観を覆すことが聞けて非常に嬉しいです。我々、ティーバッグ製造会社というのはこれまで長く「安もんや」と、言われてきました。今でこそティーバッグの用途を見直す機運が高まっていますが、EN TEAさんのように最高級の茶葉でティーバッグ商品をご提案されるお茶屋さんが増えていくといいですよね。
知人にお抹茶の表千家の先生がいて、以前EN TEAさんのお茶をその方へ贈ったんですよ。そうしたらめちゃくちゃ喜んでくださって。お煎茶の方ではないんですが、ティーバッグについて感想を聞いたら「これはこれで美味しい飲み方やし、ちゃんと淹れたらいいんやで」と言われました。さらに手軽で便利だということも言っていただいて、今のお話にも通じるなとふと思い出しました。
EN:今回のお話が、たくさんの方に届けば皆さんきっとティーバッグへの印象が変わるだろうと思いました。貴重なお時間をありがとうございました。
PROFILE / 白石 俊正
京都にあるティーバッグ・ドリップバッグなど飲用関係のフィルターとラッピング資材の企画・製作を行う「山中産業」営業部・部長。主に、海外に向けた商品のPRや販売活動に従事。商品を売るだけではなく、幅広い顧客のニーズを抽出し、社内の製品開発者へとつなぐ役割を担っている。
https://yamanaka-sangyo.jp/
関連商品はこちら
水出し緑茶 ティーバッグ7個入
¥ 1,728(税込)
心が晴れる鮮やかな緑と透き通るような美しさ。さまざまな場面で気分を明るくし、整えてくれるEN TEAを象徴する茶です。500mlの水に、ティーバッグを入れて30秒間シャカシャカ振れば、瑞々しい茶がお楽しみいただけます。